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BD14790_.GIF 相続税を何とか減らしたい
Tax saving
 

 相続税対策の基本

 対策として生前にできることは概略次のとおりです。この中にはご自分の置かれた状況にそぐわなかったり専門的過ぎるものもあると思いますが、一種の理念型として捉えて下さい。  
 (1)他の相続人への配慮を前提として、養子縁組制度 を利用して相続税の基礎控除額を上げる。
  (2)現預金をそのまま持っていると100%課税対象になるので、資産を購入して相続税評価の引下げや資産の組み換えを図る。
 (3)実際の処分価格より相続税評価が高いと思われる資産を処分する。
 (4)年間110万の非課税枠を利用して生前贈与 する。
 (5)贈与税の各種非課税措置を利用して生前贈与し、余剰資金を妻子に移転する。
 (6)妻子を被保険者とする生命保険契約の権利を贈与したり、500万の非課税枠を活用するため自己を保険料負担者及び被保険者とする生命保険料 を支払う。
 (7)余剰資金を運用して収益資産を購入したときは、法人成りをして法人資産とし、株式を贈与する。   なお、バブル期には銀行からの借金で不動産を購入し、資産評価を通じてマイナスの相続財産を創出することが流行りましたが、現在では、デフレ、土地の値上がり益が見込めない、などの事情から、借入金による投資は慎重に進める必要があります。  また、冷水を注ぐようですが、節税はオールマイティだと思わないことです。所得税や法人税など「収得税」の世界でもそうですが、税金の節約と資金の関係は常にトレードオフであるということ。ある意味で節税とは資金を減らすことと言っても言い過ぎではありません。お金のあるところに課税される。言い換えれば節税できたということはお金がなくなっていることの反映とも言えます。
 

 贈与する

 生前に贈与する
  年間110万の非課税枠を利用して生前贈与することは手っ取り早い対策であることは前に述べました。調査で最も否認事例の多い名義預金を避けるためには、毎年贈与契約書を作り公証人役場で確定日付を取っておくのが最も確実な方法ですが、それが煩わしければ、相続人が給与の振込口座など実際に使っている口座に振り込むのもよい方法です。なお相続時精算課税よりもこの暦年課税贈与の方が一般的には有利です。
 加算されない生前贈与の特例
 年間110万の非課税枠を利用した生前贈与は、110万以内に収まって申告しなかった場合も超えて申告した場合も、相続開始前3年以内なら相続財産に加算されてしまいます。
 ただし次の3つの特例が適用される贈与は、どのような場合にも加算されることはありません。
1.贈与税の配偶者控除
 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円までの控除ができます。
2.教育資金贈与
 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち一定の要件を満たすものは、贈与税の課税価格に算入されず、相続財産に加算されません。 ★直系尊属から一括贈与を受けた教育資金の非課税
3.住宅資金の贈与特例
 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち一定の要件を満たすものは、贈与税の課税価格に算入されず、相続財産に加算されません。 
 妻の預金を名義預金とされない方法
 夫名義で稼いだ財産でも妻には半分の潜在的な共有持分があるというのが民法の婚姻法の考え方で、離婚による財産分与では婚姻中に形成された妻に原則として半分の権利があるという考え方が採用されています。
 ところが税法では、夫婦間の金銭その他の資産のやり取りは、両者が経済的に独立した主体という前提で解釈されますので、ご注意です。たとえばサラリーマンである夫の給料を妻が管理して家計や育児代をその中から支出し、残りを妻が自分名義で預金 するという処理が世の中では流通しています。夫が亡くなったら妻の預金は夫の相続財産となります。
 このような場合、妻が共稼ぎ世帯などで自分で蓄えたり、実親から相続または贈与により得た現金は元来妻のものですから、分別して管理する。夫の預金で生活費に使った残余のものはあえてそのままにしておくか、贈与契約書で非課税限度額内の金額を移すなどの工夫をしておけば夫の財産とされることはないでしょう。
 

 不動産を活用する

 利用区分(評価区分)を生前に分けておく(財産評価を低くする)
  宅地の価額 は、必ずしも登記簿の一筆ごとに評価するわけではありません。たとえば数筆からなっていても、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地)ごとに評価し、また、相続、遺贈または贈与により取得した宅地については、原則として、取得者が取得した宅地ごとに判定することになっています。
 一般論として言えば、自分の土地の一部を賃貸や借地権の設定などによって他人に使用させている場合には、他人の占用部分は別の土地の利用単位として評価されますので、自分の土地を細分化して運用することにより、一体として評価した場合の評価額よりも低い価額で評価することができます。
 たとえば、自宅の建っている土地のうち利用可能な部分を貸店舗、アパート、マンション、駐車場などに転用するなどがその例です。分割しただけで評価額が下がるほか、貸地や貸家建付地にすることによってさらに評価を下げることができます(大塚雅明「税務企画講座」より)。
 アパートを建築する
 潤沢な現金を保有している、あるいは過去に余裕資金で遊休地を買っているなどの事情では、将来の相続に備えてこれらを有効活用する手段としてアパートを建築することがどの節税本では推奨されています。自己の余裕資金でアパートを建築することは、相続税の節税効果があることに現在も変わりはありません。
 資本収益率は市場利子率に収斂するというのが経済原則であり、バブル期に流行ったような、不動産をまるごと借金でというようなことは厳に差し控えるべきです。ですから、銀行借入れに依存する資産取得は今の時代は慎重であるべきです。既に所有している土地があり、あくまで建物の建築資金のみ自己資金に加えて不足を借入れに頼るというのなら検討する価値がありそうです。
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[例]私の財産は2億円の現金。これではまるまる相続税に取られてしまうのでアパート建築をして少しでも相続税を減らし、財産を妻と子二人に残してやりたいと思っている。
1.現状のままだと相続税はいくらかかるのか
2.1億円は土地に投資し、その上に5000万円でアパートを建築し、賃貸に出したい。残りの5000万円は生活資金としてキープしておきたい。相続税はいくらに減るか
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  銀行から借金すればさらに節税効果は上がりますが、賃貸業のリスクがあるので銀行から借金はせず自己資金のみでやる例です。
1.現金資産2億円にかかるる相続税は、
 20,000万円−(3,000万円+600万円×法定相続人3名)=15,200万円
 配偶者 15,200万円×1/2×30%−700万円=1,580万円
 子   15,200万円×1/2×1/2×20%−200万円=560万円
     560万円×2=1,120万円
 計   1,580万円+1,120万円=2,700万円
 

2.資産の組み換え及び相続税評価の引き下げにより相続税は次のようになります。

            ┌───────┬───────┬───────┬────┐
                │   購入価格   │ 相続税評価額 │ 使用権控除後 │   注   │
     ┌─────┼───────┼───────┼───────┼────┤
     │  土 地  │    1億円     │  8,000万円   │  6,320万円   │ (注1)  │
     ├─────┼───────┼───────┼───────┼────┤
     │  建 物  │   5千万円    │  3,000万円   │  2,100万円   │ (注2)  │
     ├─────┼───────┼───────┼───────┼────┤
     │  現 金  │  (5千万円)   │              │  5,000万円   │        │
     └─────┼───────┼───────┼───────┼────┘
        財産合計│    2億円     │  課税価格合計│  13,420万円  │
           └───────┘       └───────┘
 
 (注1)路線価は通常、実勢価格の8掛け。賃貸アパートの使用人の権利は借地権割合0.7×借家権割合0.3として(東京の商業地の場合)、土地評価は相続税評価額に(1-0.7×0.3)を乗じた金額となります。
 (注2)建物の相続税評価は固定資産税評価額です。建物の構造にもよりますが、通常建築価額の60%位になります。その金額からテナントの使用権である借家権割合(東京では0.3)を控除します。  13,420万円−(3,000万円+600万円×法定相続人3名)=8,620万円
 配偶者 8,620万円×1/2×20%−200万円=662万円
 子   8,620万円×1/2×1/2×15%−50万円=273.25万円
     273.25万円×2=546.5万円
 計   662万円+546.5万円=1,208.5万円
3.節税効果
 相続税は2,700万円から1,208.5万円へと、計算上は半減することになります。借入れがない場合ですから、賃貸による空室や賃料下落リスクなどがあっても返済不能による自己破産などはとりあえず回避できる場合の計算になります。 
4.不動産にテナント付かず借入金返済困難
 上の例は借金なしでアパート経営をやった例で、失敗すれば資金がなくなるだけでもともとと諦めればよいのですが、借入金で建物を建築をする場合はその返済がネックになります。返済が滞れば銀行から任意売却を迫られ、それでも返済できなければ破産によって物件を取り上げられてしまう可能性もあります。まず副業としてアパート経営でもやるかという心構えでは必ず失敗します。これらのスキームは一義的には不動産経営という賭けであると位置づけ、節税対策は副産物であるということを肝に銘じて下さい。
 アパート経営にはさまざまなリスクがあります。
 1 テナントが入らない空室リスク
 2 テナントからの賃料が延滞してしまう回収リスク
 3 建物の老朽化による賃料下落リスク
 4 建物の老朽化による大規模修繕リスク 
 この経営が成功しても失敗しても、出口は売却です。できればまだ建物が古くならないうちにテナント付きで売る方が高く売れるかもしれません。この際優良なテナントが住んでいることが重要です。相場より安い値で貸していると高くは売れません。アパートは賃料を利回りで還元した収益還元価格で評価されるのが業界の常識ですから。
 空室が目立ってくると売却はさらに面倒になります。高額な立退き料を要求されたり、また資金繰りが悪くなって空室を安値で貸したりしてしまいます。
 賃貸事業は管理を売るビジネスだと言われています。常に自分の建てたアパートを可愛がり、常に清潔に保ち、設備更新をして快適な空間をお客様に提供させてもらっているという気遣いをしてこそ事業が長持ちします。 
 一括借上げ30年家賃保証システムは危険
 前項で賃貸経営の困難さを説明しました。資産は持っている方の中には、高齢になり体が言うことを聞かないし、賃貸経営はノウハウが要る、面倒だ、できれば業者に丸投げして賃料を年金代わりにしたいと考える高齢者の方がいても不思議ではありません。建設請負業者が提供する「一括借上げ30年家賃保証システム」はそんな方の期待に応えるうってつけの提案のように見えます。メリットをまとめれば、
・契約すれば、空室があっても30年間家賃を保証してくれる
・建物の維持管理を代行してくれる
・入居者の管理や退去者の手続き等をやってくれる
・銀行から借入れをすることで相続税の節税ができる 
 ちょっと待ってよく考えて見て下さい。このシステムは建築請負業者が10年間で投資を回収する事業と言い直してもいいでしょう。新築家屋が前提であり、しかも建築代金はオーナーがローンを組み、保証家賃の中から返済していかなければなりません。
1.同じ金額の家賃を30年間保証してくれるわけではない
 家賃の金額は保証してくれません。当初10年間は固定期間と言って同額を保証してくれるのが通例です。家賃は2年更新とされますが、その後は業者はこれを見直し(値下げ)の機会と捉えます。2年毎に下がっていくこともあります。
 夢を見られるのは最初の10年だけです。10年経ったら単なる中古物件です。この時まで業者は投下資本を回収していますし、解約してもらってもよいと考えています。オーナーにとってはこれからがローン返済の正念場、建物もガタが来て修繕費がかさんくるというのにです。
2.完成から3ヶ月は家賃はもらえない
 業者は建築請負の会社ですから建築費用で儲けるために仕事をしています。だから建築費用は相場に比べ、かなり高いです。また備え付ける家具や設備も指定業者のものを高く購入させられる例があるようです。
 新築落成すればすぐに入居者を入れてくれ、室は埋まります。そこまではよいのです。しかし、約款上は完成から3ヶ月は、広告宣伝費がかかるとして家賃保証は免責とされることが多く、地主(オーナー)は家賃を手にすることができません。またテナントが退去して新入居者が入る場合でも最初の1、2ケ月は家賃がもらえないケースが多いようです。
3.敷金や礼金・更新料がもらえない
 ワンルームマンション経営は、テナントの出入りが頻繁であることを利用して礼金・更新料を払ってもらえることがメリットでした。このシステムではみな請負業者に献上します。またもろもろの不動産管理を名目にして高い管理費も取られたり、テナントの電気代や水道代、ゴミ処理料もサービスを名目に大家が負担させられることもあるようです。
4.高額なリフォーム代
 このシステムの建物は安普請ですから10年経てば老朽化または飽きられ、空室が多くなる。業者からリフォーム工事が必要だと言われれば、テナントを探してもらっている手前断れない。最初から長期修繕プログラムと称して積立義務が組み込まれている場合も多い。修繕は、指定業者を使わないといけないケースが多く、料金は相場に比べてかなり高いです。業者が高率のマージンを取って中抜きしています。自前で割安な修繕業者を選ぶと解約事由になってしまいます。 
 このように、このしくみによる不動産賃貸経営は、相続税対策で建築するからか節税のために借金をして建築しています。借金には利息がつき、家賃が下げられ、高い修繕費はかさむばかり、借上げ契約は打ち切られ、空室による赤字経営を続けていくことになります。返済に窮するようになれば、残債と見比べて売却を検討するようになります。  
 タワーマンション節税
 今流行りのタワーマンション節税はどうでしょうか。アパート経営は不動産経営を手作りでやっている実感がするところが長所ですが、空室や賃料下落、資金繰りの苦労などのリスクがいつも付きまといます。タワーマンションなら通常最初から大手の管理会社が付いていて、テナント管理などを丸投げできますので、その点気が楽です。空室で収入減少なら比較的高い値段で売却も可能。この商売は賃料で稼ぐというより、リフォームによる転売益、それに相続税対策でしょう。
 なぜ節税になるかといえば、マンション全体の土地の路線価や建物の固定資産税評価額に所有する部屋の占有割合(100室あるとすれば100分の1)を掛けたものが評価額となる。つまり、専有面積が同じであれば値段の張る高層階も比較的買いやすい低層階も、基本的に相続税評価額は同じ。高層階ほど実売価格と相続税評価額の開きが大きくなり相続財産の価格が下がるというわけです。
 最近話題になりましたが、すでにほぼ全室完売の千葉県某市駅前にあるタワーマンションが鉄柱の本数が足りず、耐震構造基準を満たしていないことが報道されました。専門家に聞くと、こういう場合最初から建て直さないとダメという話でした。ゼネコン各社も利益率を上げようとしてコストを節約している結果です。十分に研究してから購入した方がよいようです。
Bd15134_.gif 小規模宅地等の特例
   小規模宅地等の特例 については、下記の改正が平成26年1月より施行されています。
   二世帯住宅及び老人ホーム入居の場合の小規模宅地減額特例の見直しについて
 

 遺産分割による対策

 配偶者の税額軽減の使いようによっては次の相続がたいへん 
1.配偶者が相続すると相続税が安くなる
 (1) 配偶者は相続税がかからない〜第一次相続
 配偶者が遺産を相続 しても、取得財産についてその法定相続分と1億6千万円のいずれか多い金額まで相続税はかかりません。ただし、以下の要件を充たしていることが必要です。
  ?@ この規定の適用によって税額がゼロになる場合でもその明細を記載し、一定の書類を添付した相続税の申告書を提出すること。なお期限後申告や修正申告でも認められないことはありません。
  ?A 申告期限までに遺産の分割協議が成立し、配偶者が取得する財産が決まっていること。配偶者が具体的に取得する財産が決まっていなければ、この軽減特例は受けられません。
 申告期限までに分割協議が整わなかった場合は、遺産が未分割 である前提で期限内に申告すると同時に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出します。その期限後3年以内に遺産の分割が成立ずればその日の翌日から4ヶ月以内に「更正の請求」をすることによりこの軽減特例が受けられます。
 (注)婚姻の届出をしていない内縁の配偶者には適用がありません。
 (2) 第一次相続で起こりがちなこと
 親が亡くなっても遺産が協議で分割されないまま長期間が過ぎてしまうことは珍しくありません。税に詳しい人に聞いて相続税がかかりそうもないことを知っている家族によく見られます。
 また、子同士で話し合うのは面倒臭いとか仲が悪いとかの場合に協議が放置されることがよくあります。子同士で折り合いが付かないときは「当面相続税がかからないのなら」という事情でとりあえず全て母に継がせるなどの処理がされます。
 とりあえず生存配偶者が全財産を相続すると、税はかからないものの、次の相続(第二次相続)まで相当額の財産がそのまま温存されたり、また、生存配偶者が実親からの相続などで得た固有資産も加えたものが第二次相続の対象となってしまいます。第二次相続では配偶者軽減もなく、子同士の分割になりますので税負担がきつく、また分割の話合いがなかなか付かずに争族になったりすることが多いのです。
2.第二次相続を見据えた分割とは
 第一次相続で配偶者の税額軽減をフル活用するためには、小規模宅地等の特例 の使える不動産などは子が一部を取得し、生存配偶者は老後の生活を配慮して評価引下げの効かない金融資産を取得するなどの分割方法が推奨されます。子は既に世帯を持っていて同居親族がいないなど小規模宅地の特例が受けられないときは、近くに住む生計一の親族や、賃貸で暮らしている他の相続人などに相続させる方法が考えられます。
 (注)平成22年改正前は居宅土地の一部でも配偶者が取得すれば全体を特定居住用宅地等として優遇が受けられましたが、現在では特例の判定が厳しくなり、適用が受けられるとされた取得者ごとに取得した部分のみに適用されることになっています。
 財産を生前贈与する際も、このように将来起きる相続に考慮した贈与が必要になります。小規模宅地の特例の適用を受けることが今から不可能とわかっている場合なら、相続時精算課税制度を使って生前に不動産を贈与してしまうなどの選択肢も日程に入ってくると思われます。 
3.第二次相続での財産の評価引下げ
 第二次相続を控えているときの財産の評価引下げ策としては、第一次相続で生存配偶者が多額の金融資産を所有しているので子が所有している実物資産を時価で買い取るなどの方法が考えられます。
 例えば第一次相続で子が取得した小規模宅地の特例を受けられる宅地を親が時価で買い取ると(注)、金融資産の生前贈与になると同時に、第一次相続では受けられなかった小規模宅地の特例を今度は生存配偶者の相続の際に受けられることになります。宅地に限らず時価と相続税評価額に開差のある財産なら、実行を考慮してもよいと思われます。
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[例]生存配偶者が同居する子から時価5,000万円の居住用宅地を買い取る。
 
  子 所得税を負担して5,000万円を受け取ることができる
  生存配偶者 相続財産から5,000万円減少し、将来の相続でも居住用宅地は1,000万円{5,000万円×0.2}と評価される
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 (注)譲渡所得に対する税金が気になりますが現在は短期間で地価が上昇するとは考えられませんので、税額も最低限という前提で推奨されます。子が相続してから5年超所有するのがベター。なお居住用の3000万特別控除は使えません。
 お奨めできない養子縁組
  昔は家業の継続や戦争孤児の救済法としての養子制度でしたが、現在ではそのような事情で養子縁組をするのはごく特殊なケースです。相続税の節税法として同居長男の嫁や孫を養子にする例は今でもあります。「戸籍が汚れる」から奨めないという人もいますが、相続で問題になるのは養子縁組により相続分が少なくなったり遺留分 が減り、相続人間でトラブルが起きやすいことが挙げられます。養子縁組が実体経済として必要なときのみに実行されるべきだと思います。
 

 生前でも必要とわかる費用は支出する

 生前に非課税財産の支出
  相続開始後に必ず発生する費用を今から支出して現金を減らしておきます。すなわち葬儀費用などは相続税申告で控除される一方、控除されないものもあります。たとえば、墓地購入費用や修繕の費用、相続税支払のために土地を譲渡する必要が出てきた場合とか物納 を選択せざるを得なくなった場合の測量や境界確定などは費用と日数が相当かかりますので、今から実行しておきましょう。 
 葬儀費用は債務控除の対象
 遺族にすればなるべく身内だけでこじんまりと済ましたいという考えもありましょうが、意外と故人に知合いが多く「なぜ知らせてくれなかった」と言われる場合もあると思います。好みもあるでしょうが、費用をかけて盛大にやれば故人にも喜んでもらえるという考えもある。人を多く呼べば香典もたくさん集まります。香典は非課税で葬儀費用とツーペイでしょうから、税金の面からだけ考えるのもよくありませんが、大掛かりな葬儀は財源面でも税金面でも考慮する価値はあります。
 

 生命保険を活用する

 一時払い終身保険に入る
1.500万円の非課税枠を利用する
 被相続人が被保険者かつ保険料の負担者、相続人が保険金受取人である生命保険 の場合、法定相続人一人につき500万円の非課税枠があることは前に説明しました。同族会社などの法人契約でも役員・従業員の遺族を死亡保険金の受取人としているものは多くあり、同様の効果があります。
 高齢者が保険に入ろうとしても入れてもらえなかったり逆ざやになったりすることは通常です。この場合諦めることが多いのですが、相続財産を多く遺したいということならば、今売られている「一時払い終身保険」に入ると保険金は保険料と同じ額くらいしか戻ってきませんが、非課税枠分を利用すればその分だけ相続財産が減少することになり、使い勝手もよいので相続に向いた生命保険ということができます。 
2.遺産分割のときの使い勝手がよい
 相続財産が一つの宅地だけとか非上場株式など分割 が難しいものが大部分である場合には、配分に苦労します。このような場合は生命保険を利用して、株式や土地を相続しない相続人に保険金を取得させ分割を衡平にしてトラブルを防ぐことができます。 
 

 法人成りによる節税を実行する

[不動産管理会社で節税と経営の合理化を]〜所得分散による累進税率の緩和  <!--工事中・2月公開予定-->
[同族会社の利用法]〜個人の不動産所得を法人へ移行させてしまう  <!--工事中・2月公開予定-->
[同族会社株式を評価引下げ後に贈与する]〜生前対策の総仕上げ  <!--工事中・2月公開予定-->
  平成26年12月15日
  
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