日本をどうする?
松原事務所デジタル通信
平成16年7月
参院選が近い。投票率が何%行けば与野党伯仲と議論も喧しいが、皆さん投票に行きましょうと言うのは野党イデオロギーであり、通りがいい。投票所で来た有権者にテレカを配るのも投票率が上がってよいし、電子政府だからネット投票も考えていい。森前首相は浮動票は寝ててくれればいい、と言ったが、その意味で現在の投票制度は自民に味方している。以前のデジ通で年金制度改革は消費税上げに等しいと書いたが、専業主婦は保険料の負担がないので消費税反対選挙のようにならず、与党はそれを見越しているというのは穿ち過ぎだろうか。当日の天候などで投票率が左右され、それによって議席が決まり政局がそれに翻弄される、民主主義がベストで万能でないことは確かだ。

平成16年8月
もうすぐ終戦記念日だ。日米戦争で彼我の実力差が20倍あるのに敢えて決戦を挑んだ。フィズィビリティ・スタディで勝ち目はないとわかっていたのに、「我陸軍が負けるというのか」という声に脅されて泥沼の戦争に突っ込んでいった。そして戦後。知識人は今度は社会主義一辺倒になった。共産主義は必要に応じて受け取れる社会だというのを真に受けた。そんなことができるはずがないことは小学生でもわかる。ノメンクラツーラという支配層のみが「必要に応じて受け取った」。改憲論議がかまびすしい。こういう愚(世界の)がまたこれから起きても不思議ではない。

平成16年9月
ハイテクトレーニングと脱精神主義の勝利。ホームでの東京五輪ではメダル数が多いのは当然だが、アウェイであるアテネの今回はそれをも上回った。過去の大会では日本はやけに銀と胴ばかりが目立ち、大昔の東京五輪での円谷選手の例を引くまでもなく、ここ一番での精神的弱さが指摘されていた。勝因の一つは代表選手選考の方法のドラスティックな変更だ。過去の実績よりも直前のトライアルレースでの一発勝負に生き残った者に出場権を与える手法だ。昨年11月東京国際女子マラソンで高橋尚子選手が我事務所前 (本塩町信号前)の心臓破りの急坂で失速し、事実上五輪出場を断念させられることになったのが象徴的である。長嶋ジャパンの精神主義にこだわり勝つ野球を忘れたチームが金を取れなかったのは残念である。

平成16年10月
イチローが大リーグ新記録を樹立したことで日本のプロ野球人気は蘇るか。その逆である。科学や技術の分野での頭脳流出と国内の空洞化という共通の問題点がここにある。12球団のうち巨人、阪神、広島を除いて全て赤字というのは昔でいう<構造不況業種であって、ここは一リーグ制にも三分の利がある。相撲は一リーグ制でうまく行っている。なぜ高校野球に人気があるか。各校がその地域性を代表しているからだ(尤も東北などの高校に関西出身者が『越境入学』しているという問題点はある)。黒字3球団はその故に人気を保っている。札幌と福岡の球団は些か人為的なところがある。日本という地域的にも均質な社会でアメリカのような多球団制を求めるのには無理がある。今日本に残しておきたい球団はどこだろうか。

平成16年11月
十月末に米大統領選の番組を見た。カトリックは少数派なので伝統的に民主党支持である。しかし今回は共和党が堕胎(abortion)を厳しく処罰する政策を打ち出しているので、相当数は共和党に流れると言う。前回の選挙でも堕胎が争点になっていたが、なぜそのようなことが争点になるのか日本人の私にはガテンが行かなかった。彼らはそれを人殺しと同等と見ていたのだ。ブッシュが信奉するキリスト教原理主義は元来在米ユダヤ人の考えと相容れないのだが、既にネオコンを政権中枢に据えることによりその取り込みに成功している。利益誘導ではなく、アメリカ人の優れて宗教的な心をどちらが惹きつけることができるかがこの選挙の帰趨を決するであろう。しかしもう一つの一神教イスラム教徒とどう和解するか頭が痛いところだ。

平成16年12月
イラク戦争の泥沼化でマーケットはドルの投売りに出ている。再選後のブッシュは<双子の赤字解消にはもうドル安しかないと踏んだようだ。来年中には80円台になり、中東での米国の行動がこのまま続けば3年後には 50円台になるという予測もある(森永卓郎氏)。日本は巨額の貿易黒字で得たドルを米国債の購入に注ぎ込み、今までに国家予算の 2倍近くの70数兆円も買い支えている。なのにこのドル安だから、個人消費は持ち上がったものの来年からの<増税攻勢もあってデフレが続こう。我が国は生産の手段である労働・土地・資本のうち労働と土地を中国からの《輸入》に年々頼るようになってしまった。不要になった工業用地・農業用地が市場に放出されれば、日本の資本主義を支えた土地は最終暴落?そうならぬことを祈りたい。

  平成16年11月30日
  
メインに戻る